本年5月末をもって理事長を退任いたしました。平成14年に理事長を拝命してから14年間、多くの患者さんや医師会の先生方、行政の方々、すべての職員の皆様に支えられての年月でした。思いかえせば当院に赴任したのが昭和58年ですから、川崎病院での医師生活は33年、副院長、院長、理事長に就任し、病院理事として当院の経営に参画してから26年の歳月でした。この間、日本の国の社会情勢や政治状況、経済状況は大きく変化しましたが、その影響を受けて川崎病院もいろいろと改革を余儀なくされました。バブル崩壊後の保険財政の悪化による患者さんの自己負担の増加、平成7年の阪神路大震災による病院の被災、平成12年頃からの医療事故多発への対策の強化、近年の医師不足、高齢化に対応するための医療制度の変革など数えれば限りのないほどの多数の問題がありました。しかし、多くの方々のご支援やご援助により、また、多方面にわたる困難に直面しても正面から解決することを厭わなかった職員の皆様の知恵と労力により、川崎病院は時代の大波を何とか切り抜けることができました。3年前にはすべての建物のリニューアルが終了しました。しかし、近年は国家の財政状態の悪化や人口の高齢化への対策は緊急の課題です。これに対応するために川崎病院もさらに大きな改革を強いられることでしょう。地域の高齢化は顕著なものがあります。国家をあげて進めようとしている地域包括ケアシステムに急性期病院として、その重要な一員として当院は高齢者救急の強化に当たらねばなりません。永年、目標としてきた医療内容の充実と安全な医療、患者さんへのサービスの向上などはまだまだ満足するにはほど遠いものがあります。このような大切な時期に向かう折、やや遅きに失したかもしれませんが、新しい感受性と発想が必要な時期の到来と判断し次世代へバトンタッチし、引退を決意しました。
繰り返しますが、本当に多くの方々に支えられて何とかここまでやってこられたことを実感し、現在はひたすら感謝の気持ちで一杯です。心からお礼を申し上げます。私は診療や経営の第一線からは引退しましたが、今後も少しでも川崎病院の力になって地域の医療の充実に貢献したいと念願し、元の臨床医に立ち返り体力と智力の衰えを許される限り、外来の患者さんの診察は続けていきたいと存じます。今後も川崎病院をよろしくお願いいたします。