化学療法後3日目。
夜中もシャックリがとまらず、薬を飲んでもおさまらず、あまり眠れず。
午前中はうとうと。
午後からは下肢静脈エコーをおこない、ポートを造設する。
退院後は外来で化学療法を行うことになる。
入院中は血管から点滴を入れられるのですが、薬剤が強いせいか、点滴を挿入した血管がけっこう痛く、刺していた血管は終了後も数週間色が変わったままになっていました。
退院後は2週間ごとに化学療法を行うため、大きい血管に近いところにポートを造設し、そこから点滴を刺して治療を行います。また、ポートにすることで、外来後には抗がん剤を自宅に持って帰り、48時間自宅で点滴を続けるのですが、終了後には自分で点滴を抜くことができます。自分で抜けるんです。すごいですね。医療技術の進歩はすばらしい。
さて、ポートの造設で呼ばれます。
ポートを左の鎖骨の下辺りに埋め込みます。皮膚を切ったりするので手術です。
病院で働いているときは、よく聞く手術なので安易に考えていましたが、いざ手術台にあがると緊張。ちょっとこわいぞ。麻酔が効いているとはいえ、若干の痛みとごそごそされているのはあまり気分のよいものではないです。
しかし特に問題はなく手術終了。たしかに左胸に何か入っている。
ちょっと違和感と痛み。
胸にポートが入って、なんなくガンと戦える体になったような感じ。
つづく
ポート(CVポート)・・・様々な薬剤を注入するために皮膚の下に完全に埋め込んで使用する医療材料です。皮下埋め込み式中心静脈カテーテル。
化学療法後2日目。
夜中に汗をかいて目が覚める。それまでにぐっと寝たのか、その後は目がさえてしまう。
汗臭い…。
夜間は夜勤の看護師さんが様子を見に来ます。
朝方になると日勤の看護師さんに交代し検温、バイタルサインの測定をします。
点滴は繋がれているが、身体は普通に動けるので、看護師さんと関わるのは
検温と点滴の管理する時間くらい。
約5日間の入院中に朝晩、毎日違う10人ほどの看護師さんと関わる。
同じように検温されているのに印象は様々。
対応が悪かったということは一切ありません!(ほんとに)
今回、担当していただいた看護師さんはみなさんしっかり話を聞いてくれて、手際も良く、しっかり指導されているのだろうなぁと感心しました。
基本看護師スキル(接遇も含めた)+人柄で患者の感じ方は違うのだろうと思ったのです。
ほんの数分の会話と処置をするだけなのですが、
「あ、この人はできる人なんだろうなぁ」とか
「業務を淡々とこなす人なんだろうなぁ」とか
「愛想は良いけど、なんか薄っぺらい感じがするな」など。
どう感じるかはもちろん患者次第で、他の患者さんも同じように感じるわけではありません。しかし、その人がどのように仕事に取り組んでいるかとか、どんな日常生活を送って、どんな人間関係を築いているのかなど、その人の人柄は同じ業務や言葉かけをおこなったとしても、やっぱり出てしまうのだろうなぁと感じるのでした。
はたして自分が関わってきた患者さんたちは、自分に対してどんな印象をもってくれたのだろうか?流れ作業になっていなかったか?患者さんにとって安心できる医療従事者であったろうか?
医学やテクノロジーがどんなに進んでも、患者さんとの人と人との基本的な関わりは変わることはありません。「技術だけでなく、心の通う医療が提供できる医療従事者でありたいな」と思うのでした。
バイタルサイン・・・日本語で「生命兆候」。生きていることを示す指標で「脈拍」「血圧」「呼吸」「体温」の4つの指標のこと。
つづく
緊張していたのか夜はあまり眠れず。
化学療法は12時頃から開始予定とのこと。
※ちなみに自分の化学療法は進行・再発の大腸がんに対する抗がん剤として使用される薬剤を用いた治療です。
時間になり、まずは吐き気止めの点滴30分。
その後、抗がん剤が90分、120分と投与される。
点滴が抗がん剤に交換されて1時間くらいたって、身体を起こして座ると汗がじわっと吹き出てくる。だるさもあってそのまま寝てしまう。起きると唾液が溜まる感じもある。
二つ目も終わり、次は48時間持続の抗がん剤に交換される。
夕方になり夕食の時間。
病院のご飯はおいしい。病院食なのに普通においしい。
病院食は大量に作るから大味になると勝手に思っていたけど、そんなことないのね。
とはいえ、倦怠感と汗の噴き出す感じが続いており、少し残してしまう。
TVを観て過ごしたりしていると、汗は止まってくる。
これが副作用か…。
初回のせいか副作用が思ったほどではなかったのが正直な感想(後から色々出てきますけどね)。
あとはどうか効いてくれ!!
祈るのみ。
化学療法・・・
抗がん剤を用いて治療することです。
抗がん剤にはがん細胞の増殖を抑えたり、再発や転移を防いだりする効果があります。
手術治療や放射線科治療が、がんに対する直線的・局所的な治療であるのに対し、化学療法ではより広い範囲に治療の効果が及ぶことが期待できます。
つづく
病院で働いていると、調子が悪いときは自分の病院で診てもらうので、あまり他の病院を受診することがない。ましてや入院は学生時代、スノーボードで鎖骨を骨折して、一泊二日の入院をしたくらい。他の病院に入院というのはちょっと楽しみ。
逆に病院側からすると、同業者の入院や診療は、病気のことや病院の仕組みなど当然よく知っているので少し構えてしまうのではないだろうか(あくまでも個人の見解です)。
なので、自分のような、ええ年をした医療従事者の入院はイヤかもなぁ~と思ってしまう。
しかし、隠すわけでもないのでしっかり「川崎病院の医療従事者です」という顔をして、病院の入院生活を送ることにしました。
今日は採血と総合内科の受診のみ。
採血の結果が問題なければ、明日から化学療法(抗がん剤治療)が始まる。
総合内科では研究の一環で下肢静脈血栓の検査をおこなうための診察。
腫瘍内科では、がんの患者さんに対して下肢静脈血栓の発症の研究をおこなっているとのことで、研究の内容や方法についての説明を受け「自分のデータが今後の医療の役に立つのであれば」とよろこんで協力することにしました。
入院中に下肢静脈血栓の検査を行い、次回の診察は年明け1/7とのこと。
3ヵ月後?…そのころ、はたして生きているのか?
夕方には主治医の先生がこられ、
「血液検査の結果がでて、明日から化学療法できそうです。がんばりましょう」と。
とりあえず、よかった。治療ができそう。
よかった。
つづく
父と母の雰囲気から何か感じているかも知れないけれど、
がんが発覚してから子供たちには何も話していない。
明日から5日ほど病院に入院。
出張でも2泊3日くらいしか家を空けたことがない。
化学療法が始まれば、家で横になっている時間もあるだろう。
さて、どうやって子どもたちに現状を伝えたら良いのか???
奥さんはすでにいろいろ調べており(すごい!)、
子供には「3つのC」をポイントにして伝える方法があることを教えてもらう。
・それはCancer(がん)という病気。
・それがCatchy(伝染)しない。
・そのCaused(原因)は、あなたや私がこれまでしてきたことも、
しなかったことも、まったく関係ない。
第1回家族会議。
議題は「父ちゃんはがん」
子どもたちを集めて、食卓に座らせる。
我が家で初めての家族会議となるため、子どもたちも何か感じているようす。
どう切り出して良いかわからず、「3つのC」にして伝える。
・父ちゃんはがんになってしまった。
・おばあちゃんがなった病気と同じ。
・それで明日から治療のために入院となる。
・がんはお前たちにはうつる病気ではないから安心してほしい。
・がんになったのは誰のせいでもなく、たまたまなっただけ。誰が悪いわけでもない。
・たぶん毎日お酒を飲んでいたのも関係ない(なくはない?)。
・なかなかやっかいな病気で、治療も大変なので何度も病院に行き、家でも寝込むことがあるかもしれない。
・父ちゃんが入院している間や動けないときがあると、かぁかの負担が増えるから、
みんなで協力して、かぁかが困らないように、自分のことは自分でしたり、お手伝いして助けて欲しい。
はっきり、どう言ったか覚えていないけど、このような内容を伝えたと思う。
娘の運動会があり父が行く予定になっており、楽しみにしてくれていた。
いけなくなったことを伝えると泣き出してしまい。これはつらかった。
私の座右の銘ではないが、小学校のときから常に頭に残っている言葉がある。
「つらいときこそ笑え」「逆境を楽しめ」
何かの漫画の台詞だったと思う。学校生活、部活の試合、日常生活でなにかしらピンチ、「これはやばい!」となったときに、いつもこの言葉が浮かんでくる。
がんが見つかったことで明らかに生活が一変。
初めて受ける検査や治療、今までと違う日常生活。
先の見えない不安。
「いろいろ大変になると思うけど、父ちゃんはこの状況を楽しんでやろうと思う。」
少しでも自分は大丈夫だと安心させたい思いから、そんなことを最後に伝えて家族会議は終了。
つづく