2026.07.29 お知らせ
【開催報告】7月25日(土)かわさき健康講座 特別企画 「まなつのじごく@川崎病院」を開催しました
かわさき健康講座 夏休み特別企画第1弾「まなつのじごく」は無事終了いたしました!

2026年7月25日(土)、川崎病院でかわさき健康講座 夏休み特別企画「まなつのじごく@川崎病院」を開催いたしました。
社会福祉法人木の芽福祉会の障害福祉作業所 御影倶楽部の皆さま、神戸電子専門学校グラフィックデザイン学科の学生の皆さまをはじめ、多くの団体・個人の皆さまのご協力のもと、多世代・多様な方が集うアートイベントとして無事に開催を終えることができました。ご参加くださった皆さま、そしてイベントを支えてくださったすべての皆さまに、この場をお借りして心より御礼申し上げます。
* このイベントの様子は、2026年7月29日付 神戸新聞『わがまち』神戸欄に掲載されました。
普段は交わるきっかけのない人たちが、一緒に地獄をつくる仲間に

当日は、子どもからおとなまで、多世代・多様なメンバーが会場に集まりました。
今回は、交流を生み出すこと自体をイベントのねらいのひとつとしていたためあえて世代や属性が偏らないよう主催者側でグループ分けを行い、グループごとに活動していただきました。
まずは、神戸市灘区にある照光寺の津守住職による「じごくのおはなし」からスタート。浄土真宗における「地獄」のとらえ方に触れながら、子どもにも親しみやすいアニメの話を交えてお話しいただいたことで、難しいテーマにもかかわらず、子どもたちにもすんなりと伝わっていく様子が印象的でした。ユーモアあふれる語り口によって、「地獄」という言葉が本来まとう怖いイメージは、この時点ですでに和らいでいたように思います。
手を動かすことを交流のきっかけに
講話のあとは、そのままお面づくりのワークショップへ。お面は、手すき紙の制作から成形まで、御影倶楽部のメンバーの皆さんが担ってくださいました。材料や道具を貸し借りしたり、作業のわからないところを教え合ったりするなかで、初対面同士だったメンバーの間にも自然な会話が生まれていきました。子どもたちが「こうしたい」と学生に伝え、教えてもらいながら形にしていく光景も見られました。
手を動かして一緒に作る時間を共有するという非言語的な協働体験は、世代や立場を越えて自然な交流を生み出すきっかけになっていたようです。また、それぞれが表現するお面の個性やアイデアの違いが、お互いの創作への刺激にもなっていたように感じられました。そこに昼食をともにする時間が加わり、グループ内の交流はいっそう深まっていきました。



「どんな地獄に、どんな鬼が住んでいるのか」を語る時間

午後からは、参加者全員が認定心理士から『どんな地獄に、どんな鬼が住んでいるのか』と尋ねられるインタビューを受け、自分がつくったお面について語る時間を設けました。同じテーマを与えられても、とらえ方や感性の違いによって、まったく異なる形が生まれます。お面づくりの時間にすでに表れていたその違いを、あらためて言葉にして参加者同士で共有することが、このインタビューで大切にしたことです。
ひとりずつ順番に、自分の作品にまつわる物語を共有していただきました。この時間こそ、今回のイベントの核となる部分でした。実は「まなつのじごく」は、地獄をテーマにしたアートイベントであると同時に、「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」への入口となることを、企画の裏テーマとして据えていたのです。
人生会議は「もしものときにどうしたいか」について繰り返し話し合うプロセスで、超高齢社会を迎えるなか、国も普及を進めています。いざというときに突然考えようとしても難しいことが多いため、普段の暮らしの中で、少しずつ自分の価値観や生き方を言葉にしておくことが大切だとされていますが、実際には、死や生き方について正面から語ることに、抵抗を感じる方は少なくありません。今回、ユーモアを交えやすい「地獄」というテーマを入口に選んだのは、そうした語りにくさを和らげるためでした。
お面をきっかけに、自分の中にある感情や考えを語る。このインタビューの時間は、まさにその小さな実践となっていたのではないかと思います。
イベントの集大成「じごくファッションショー」の始まり
講話や制作、対話の時間を経て、いよいよ会場は神戸電子専門学校の学生がプロデュースした「じごく会場」へと移りました。廃材を活用して作り上げられたその空間は、病院の会議室とは思えないほどの変貌ぶりで、参加者からも驚きの声が上がっていました。地獄と聞いて多くの人が思い浮かべる、暗くおどろおどろしいイメージはそこにはなく、色や光、素材の使い方ひとつひとつに、学生の自由な発想が息づいていました。
その空間を舞台に、参加者たちが自ら制作したお面をまとい、「じごくファッションショー」を実施しました。ランウェイでは、参加者ひとりひとりのインタビューをもとに、学生が即興で組み上げたビジュアルが、プロジェクターで一枚ずつ投影されました。
保護者として参加された方の中には、自分から前に出ることをためらう方も少なくありません。しかし、こうした場でこそ自由に表現してもらいたいという思いから、私たちからも積極的に声をかけ、参加を後押ししました。実際、ファッションショーでは保護者の皆さんも思い思いの表現で登場し、お子さんにとっては「親にも自分なりの価値観がある」「いつもと違う一面がある」ことに気づく機会にもなったことと思います。ある学生からは、「こういう場で自由に表現できるおとなの姿はかっこいい」という声も聞かれました。
小さなお子さんも、ひとりでステージに立ってお面を披露する姿があり、その堂々とした様子に、会場からは温かい拍手が送られていました。誰かの「地獄」を、みんなでおもしろがりながら受け止める。そんな時間になっていたように思います。



半年間の関わりが、学生たちにもたらしたもの
今回関わっていただいた学生は十数名にのぼります。広報物の制作や会場づくり、関連イベントへの協力など、主催者の一員として大いに活躍してくれました。幾度となく病院へ足を運び、医療従事者を前にプレゼンテーションをする場面もありました。自らの想いを表現することに長けた学生が多かったことは、このイベントを形にする大きな力になったと思います。
学生との関わりは、今回のイベントの約半年前から始まりました。企画の初期段階で、このイベントのテーマである「人生会議」についてお伝えしましたが、おそらく、多くの学生にとって聞き慣れない言葉だったと思います。それでも、幾度となく打ち合わせを重ねるなかで、少しずつその意味を実感を持って受け止めてくれたようです。そして迎えたイベント当日の締めの言葉では、学生自身の言葉で「多様な価値観」や「どう生きるか」について語る場面がありました。
当院が目指す健康啓発は、すでに関心を持ってくださっている方々への情報発信だけでなく、まだ関心を持っていない方々にも、いかに自然な形で届けるかという点を大切にしています。半年前までは「人生会議」という言葉に馴染みのなかった学生が、イベントを通じて自分自身の実感としてその本質を語ってくれたことは、まさにその一つの成果と言えるのではないかと思います。



おわりに
今回の企画は、毎月定期開催している「かわさき健康講座」の夏休み特別企画の第1弾です。
「かわさき健康講座」は、地域のすべての方を対象とした健康啓発の場ですが、なかでも力を入れたいのが若い世代への啓発です。予防医療や早期発見の観点からは、健康上の不安を感じにくい若い世代にこそ、日頃から健康を意識してもらうことが重要だからです。
特に働く世代は、自身の健康はもちろん、子育てと介護という両方の側面から、家族の健康にも向き合う必要がある世代です。だからこそ、早いうちから健康にまつわるリテラシーを育んでおくことには大きな意味があります。とはいえ、健康な方ほど「自分ごと」としてとらえにくく、講座への参加のハードルは高くなりがちです。加えて、当講座は平日の日中に開催しているため、働く世代が直接足を運ぶことは容易ではありません。
そこで着目したのが、子どもを起点とした間接的なアプローチです。子どもがイベントに参加すれば、自然と保護者も足を運ぶ機会が生まれます。さらに、子どもが自宅で「今日はこんなことをした」と家族に話すことで、家庭の中に医療や健康の話題が生まれ、働く世代にも間接的に届いていく——そうした広がりも期待できます。こうした家族間の何気ない対話の積み重ねは、一度きりではなく繰り返し話し合っていくことが大切とされる人生会議のプロセスにも通じるものです。
今回の「まなつのじごく」は、その取り組みとして実施したものです。地域の皆さま、とりわけ若い世代の方々の健康への関心を育むきっかけの一つとなるよう、「かわさき健康講座」では今後も地域の皆さまの健康と暮らしに寄り添う企画を続けてまいります。
なお、夏休み特別企画の第2弾は、8月に地域の自治会や子ども会の皆さんと一緒に応急手当と防災をテーマにイベント形式で実施いたします。ご興味のある方はぜひご参加ください。
ご協力いただいた皆さま

まなつのじごく企画室(社会福祉法人木の芽福祉会/医療法人川崎病院/神戸電子専門学校グラフィックデザイン学科有志/任意団体 W.S.A)を中心に、以下の皆さまにご協力いただきました。
- 講話 照光寺 津守住職
- ワークショップアドバイザー・撮影 小学校図工教諭 スネ夫先生
- ACP監修 任意団体 ケアといとなみ
- 関連図書展示 神戸市立兵庫図書館
- 飲食 やさい食堂 堀江座 / COZY COFFEE
- 後援 神戸市
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