11/14(月)に、「夢野の丘あんしんすこやかセンター」様主催で開催された
「令和4年度認知症高齢者等声かけ訓練(@熊野地域福祉センター)」に、当院の総合診療科医師と
地域包括ケア病棟(※1)を担当している看護師2名が、講師として参加させていただきました。
2025年には5人に1人が認知症高齢者になっている、という推計が厚生労働省より出されていますが、
あと3年もすればその時がやってきます。
そんな状況のなか、「認知症になっても住み慣れた街で、これまで通りに生活していくためには、
地域に暮らす方々の認知症への理解と支え合いが必要」という考えのもと、
各地の地域包括支援センターでは様々な取り組みが行われています。
そして今回、
「認知症の方を理解し、声かけなどの対応方法について学び考えていく機会となれば」ということで
「夢野の丘あんしんすこやかセンター」様主催の声かけ訓練が実施されました。
参加されたのは、熊野北地域の民生委員児童委員の方々です。
はじめに、当院の総合診療科医師であり、訪問診療も担当している
家庭医療専門医である松島医師が講演をさせていただきました。
「認知症をどう診ているか」というテーマのお話のなかで、
家庭医療の基本的な考え方である「BPS(生物心理社会)モデル※2」や、「健康の社会的決定要因」に関する話から、
健康や病気には、社会的、経済的、政治的、環境的な条件が大きく関わっており、患者さんに対して薬の処方と同じように、
地域の集まりや社会活動への参加を促し、社会とのつながりを処方する「社会的処方」の考え方があることを紹介し、
つながりを生み出すための最初の一歩として「声かけ」が大変重要である、という内容でした。
その後、参加者の皆さんによるロールプレイが行われ、民生委員役と認知症高齢者役に分かれて実践形式での訓練が行われました。
5つの場面を想定し、各回2~3名の民生委員の方が実際に声かけを行い、認知症高齢者役の方とやりとりをされていました。
認知症高齢者役の方々がそれぞれに迫真の演技をされ、見学させていただいた私たちにも日常の光景がありありと浮かびました。
それぞれの立場での感想もその場で伝え合われ、相互理解を深められているご様子でした。
最後に、当院の地域包括ケア病棟を担当している看護師が、
「日ごろ認知症高齢者の患者様にどういう対応をしているか」について話をさせていただきました。
実は、このお話をさせていただくことになったのは、
「院内での認知症高齢者の患者様へのケアも知っていただく機会になれば」という、
初めに登壇させていただいた松島医師の提案でもありました。
内容は、現場で実践している「ユマニチュード」という、
主に認知能力が低下した高齢者の方や認知症の患者に対して行う「認知力の向上を目指すケア・コミュニケーションの技法」について。
実例を挙げて具体的に話し、参加された方々から「参考になった」「わかりやすかった」というご感想をいただくことができました。
全体を通して、「『社会的処方』という考え方が参考になった」「地域の病院の医師、看護師の話が聞けて安心に繋がった」
というご感想もいただきました。
今回の取り組みを窓口となって進めていた当院の担当者は、「協力者の方々が周りにおられるこということを知る機会にもなったし、
そういった方々と同じ空間で学べた経験はきっと今後の当院の取り組みにおいてもプラスになる」と話していました。
主催の夢野の丘あんしんすこやかセンター様をはじめ、参加された民生委員児童委員の方々の日々のこうした訓練や学び、
連携によって地域が守られていることを改めて実感致しました。また、私たちもその連携の一翼を担っていますので、
当院も役割をしっかり果たしてまいります。
コロナ禍で地域の活動は縮小してしまっていますが、別の地域でもこういった機会があれば参加させていただき、
私たちも地域のことをしっかりと理解し、皆様にも川崎病院の医師や看護師、病院としての考え方などを知っていただき、
新たな繋がりをつくっていけたらと思います。
※1地域包括ケア病棟:急性期治療後、患者さんは通常すぐ退院する必要がありますが、
なかには在宅療養に不安がある等の理由で在宅復帰支援を必要とする方がいます。
こうした方々が在宅療養までの間、医療や支援を受けることができる病棟のことです。
※2 Biomedical-Psychological-Socialの略